[掲載]週刊朝日2008年3月14日号
■最後の革命家のかくも“のん気”で“楽しげ”な戦い
キューバのフィデル・カストロ国家評議会議長が退任した。後任は弟のラウル・カストロ。もっとも、フィデルは今後も影響力を保つだろうし、一昨年に彼が緊急手術を受けて以来、ラウルが暫定議長を務めてきたのだから、キューバが急激に変わることはないだろうが。
フィデル・カストロは「最後の革命家」と呼ばれる。ソ連や東欧の共産政権が倒れ、中国も市場経済を導入したいま、真っ当な社会主義国家はキューバぐらいしかないし、建国の革命家で現役なのは彼ぐらいしかいない。
盟友ゲバラほどではないが、カストロの本もたくさん書かれてきた。日本でも戸井十月の『カストロ 銅像なき権力者』や佐々木譲『冒険者カストロ』などがある。そんななか、柳原孝敦監訳『少年フィデル』は、幼少期からモンカダ兵営襲撃失敗で逮捕・投獄・恩赦釈放される28歳までを語ったインタビュー集である。といっても単一のインタビューではなく、いろんな記事の寄せ集め。それだけに人間カストロのさまざまな面が見えてくる。
彼は裕福な農場主の息子として生まれた。勉強よりもスポーツが得意な少年で、学校や教師とはたびたび衝突した。思春期からは登山や冒険に夢中になる。まさか後のゲリラ戦で役立つとは思わなかっただろうが。マルクス主義に目覚めるのは大学生になってからだ。ただし、ゴリゴリの理論家というよりも、汗かく実践派である。
全体に、ラテンな大らかさに満ちているのはインタビュー本ゆえか。あるいは中南米に対する先入観だろうか。コロンビアでの暴動に参加したエピソードも、のん気で楽しげである。少なくとも、ロシア革命や日本の左翼運動のような悲壮感はない。この楽天性が、半世紀近くもキューバの人びとの支持を得てきた理由だろう。
ラウル議長になってからも、ブッシュ政権はキューバの経済封鎖をやめないそうだ。いったいアメリカは、キューバとカストロの何におびえているのだろう。
著者:フィデル・カストロ
出版社:トランスワールドジャパン 価格:¥ 1,890
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