ここから本文エリア

RSS

現在位置:asahi.com>BOOK>ニュースな本> 記事

ニュースな本

続 獄窓記 [著]山本譲司

[掲載]週刊朝日2008年04月04日増大号
[評者]永江朗

■無実の罪を着せられた人が今もいるのではないか

 強盗事件で誤認逮捕・起訴され、無罪になった知的障碍(しょうがい)のある男性が、栃木県と国に慰謝料を求める訴訟の判決が二月末にあった。宇都宮地裁は県と国に百万円の支払いを命じた。警察は男性が重度の知的障碍者で迎合的な特性があることにつけこんで、うその自白調書を作成したのだ。検察はそれを鵜呑みにしていた。

 たまたまこの事件では真犯人が逮捕され、誤認逮捕が明らかになった。真犯人がつかまらなければ、男性は今ごろ無実の罪を着せられて塀の中にいただろう。

 このニュースを聞いた瞬間に思い出したのが山本譲司『獄窓記』(ポプラ社)である。秘書給与詐取の罪で懲役刑を受けた元衆議院議員の獄中記。なかでも障碍のある受刑者たちについての記述がショッキングだった。彼らの中には、自分が何をしたのか、なぜここにいるのか、ここがどこなのかも理解していない人がいる。栃木の男性のように、無実の罪を着せられている可能性だってないとは言えないではないか。

 山本譲司『続 獄窓記』は文字通り『獄窓記』の続編であると同時に、『獄窓記』がどのようにして書かれたかを明かす『プレ獄窓記』でもある。仮出所した山本が、前科者・出所者というコンプレックスに押しつぶされそうになる描写が痛々しい。山本ほどの人でも社会復帰は難しいのだ。『獄窓記』執筆は、そんな彼の自己回復、自己治癒の手段でもあった。本を書き、さまざまな福祉現場を見ることで、山本自身が変わっていく姿が感動的だ。

 出所した山本は、刑務所内で一緒だった知的障碍のある元受刑者たちを訪ね歩く。そして、彼らの置かれている現実の悲惨さに呆然とする。せっかく出所したのに、刑務所に逆戻りした人もいる。

 が、そもそも彼らが犯したとされる罪も、些細な間違いや誤解が、まるで凶悪犯罪であるかのように仕立てられているものが多い。あるいは、他の誰かに利用されていることもある。栃木の事件は氷山の一角ではないのか。

ここから広告です

広告終わり

ニュースな本 バックナンバー

バックナンバー

このページのトップに戻る