[掲載]週刊朝日2008年6月6日増大号
■進歩した予知、あとは建物の耐震性と行政の対応…
いったい、どこまで増えるのだろう。伝えられる中国・四川大地震の被害者数を見ていて思う。夏に向かって、伝染病など2次3次の被害拡大が心配だ。私が中国共産党の幹部なら、北京オリンピックは中止にするのだが……。
大地震が起きるたびに話題になるのが地震予知である。地震雲が発生したとか、動物が異常行動を起こしたとか。そして、科学的な予知など不可能ではないか、という話になる。
日本地震学会地震予知検討委員会編『地震予知の科学』は、日本の地震予知の最前線を解説した本である。編者の名がものものしいし、東大出版会から出ているので難解そうだと思われるかもしれない。だが内容はいたって平易だ。典型的文系人間の私でも七割ぐらい理解できた(と思う)。
結論から言うと、この10年で地震予知はかなり進歩した。「地震予知など国家予算のむだづかい」などとしたり顔する人は、10年以上前の知識で言っている。その進歩は天気予報と同じだ。最近の天気予報はよく当たる。
大規模な地震については予知が可能になった。ただし、「×月×日×時に震度×の地震がある」とまではいかないけれども。
予知が可能になったのは、地震のメカニズムがはっきりして、観測の精度も上がったからだ。地震とは、地下で断層がずれることである。日本列島の場合、海底のプレートが海溝から地球の内部に沈み込んでいる。このときすんなりスライドせずに貼り付いたところがあると、そこがベリッと剥がれるときに地震が起きる。沈み込み具合、貼り付き具合、剥がれ具合が観察できれば、地震予知は可能なのである。
進歩の原動力は2つ。阪神・淡路大震災をきっかけにした観測網の整備と、コンピュータの高性能化である。断層の変化と影響についてかなり細かなシミュレーションができるようになった。
もっとも、予知さえできればいいというものではない。建物等の耐震性や行政の対応が重要だ。
出版社:東京大学出版会 価格:¥ 2,100