[掲載]週刊朝日2008年7月11日号
■『赤毛のアン』翻訳は人びとのネットワークから生まれたのかも
今年は『赤毛のアン』が書かれて100周年である。サラリーマンをしていたとき、「お金を貯めて、プリンス・エドワード島に行くのが夢」と、昼食をラーメンだけですませていた同僚がいた。『赤毛のアン』の舞台になったカナダの島である。
じつは私も小中学生のころ、『アン』シリーズに夢中になった。当時は「りぼん」や「マーガレット」もよく読んでいて、ラブコメ漫画のルーツは『赤毛のアン』とウェブスターの『あしながおじさん』にあり、と思った。コバルト文庫もX文庫も、みんなアンの末裔ではないか?
村岡恵理『アンのゆりかご』は、『赤毛のアン』の翻訳者として知られる村岡花子の評伝である。名前からわかるように、著者は村岡花子の孫でライター。
ものが元祖少女小説だし、著者は肉親だから、さぞかし甘ったるいお話だろうという先入観を持って読んでみたら、まったく違っていた。激しいのである、厳しいのである、強いのである。
村岡花子の父は社会主義者でクリスチャンで貧乏。給費生で入った東洋英和女学校は良家のお嬢様ばかり。花子が夢中で英語の勉強をしたのは、疎外感や孤独感、そしてルサンチマンもあってのことだったのかもしれない。
別居状態だったとはいえ妻子ある男と恋に落ち、やがて結婚したという事実にも驚いた。また、婦人参政権運動など社会運動にも深く関与していたとは。
女学校で親友だった柳原白蓮、短歌の師匠は佐佐木信綱、翻訳家としての先輩が片山廣子(松村みね子)。夫の従妹、賀川ハルとその夫、賀川豊彦。そのほか吉屋信子や林芙美子、市川房枝、加藤シヅエら、たくさんの人びとが花子の人生に登場する。『赤毛のアン』翻訳誕生は、これらの人びとのネットワークのなかで考えるべきかもしれない。花子にとって『赤毛のアン』の翻訳は、たんなる仕事でもなければ、まして手慰みでもなく、彼女の時代におけるミッション、使命だったのだ。
著者:村岡 恵理
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著者:モンゴメリ
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著者:ジーン ウェブスター・Jean Webster
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