[掲載]週刊朝日2009年4月24日号
■聞いたことあるような話ばかり
3月30日、高橋洋一が窃盗容疑で書類送検された。高橋は「霞が関埋蔵金」を指摘したことで有名な元財務官僚。小泉内閣では竹中大臣の補佐官を、安倍内閣では内閣参事官を、それぞれ務めた。数字にとても強い人で、構造改革路線を理論面で支えた。郵政民営化でも大きな役割を果たした。そのため、第一報を聞いたときは、「郵政民営化見直しの動きと関係があるのか? もしかして、これも国策捜査?」などと思ったが、どうやらそうではない模様。都内の温泉施設の脱衣所で、他の客の高級時計や財布を盗んだのだとか。新聞報道などによると、金品目的というより、どんな人が高級時計をしているのか知りたかったのだという。それならブルガリの店で客を観察すればいいのに。
高橋が時計を盗む2週間ほど前に出たのが、高橋洋一・長谷川幸洋『百年に一度の危機から日本経済を救う会議』だ。東京新聞・中日新聞論説委員の長谷川との対談である。もしかして、今回の奇っ怪な事件の鍵が隠されているのではないかと思い、読んでみた。
大げさな題名の本にありがちなように、中身は聞いたことあるような話ばかりだ。日本経済を救うには、財政だけじゃだめで、大胆な金融緩和をやりなさい、というのが高橋の主張。日銀のゼロ金利と25兆円の量的緩和。25兆円の政府紙幣発行。霞が関埋蔵金から25兆円を放出する財政支出。ようするにヘリコプターから金をばらまくように市中に金を供給し続けよ、というのである。ほかには、道州制が日本を救うとか、官僚に経済を任せるなとか。
高橋は競争を導入すれば世の中はよくなると思っているようだが、それはどうなのだろう。私はストレスに弱く、ちょっと緊張するとすぐ腹を下す。競争ばかりさせられているんじゃたまらない。貧乏でいいから、ゆっくりのんびり暮らしたい。
さて、高橋容疑者の犯行理由だが、本書を読んでもわからなかった。まさか、競争社会のストレスのせいじゃない、とは思うけど。
著者:高橋 洋一・長谷川 幸洋
出版社:PHP研究所 価格:¥ 1,470