ボーイズラブというジャンルがある。略称でBLともいう。「少年愛」の和製英語で、美少年同士の恋愛を扱う小説やマンガのことだ。性的表現を含む場合と含まない場合があり、1990年代後半から急速に伸びてきている。「腐女子」「池袋乙女ロード」といった注目のキーワードと並べてみるとイメージしやすい、多分にオタク的要素を含んだディープなジャンルである。
このジャンルの書店店頭での新刊の売れ方は極めて特徴的だ。新刊時には積み上げた本の山があっというまに減る。コミック専門店をはじめ愛読者を多く抱える店では1日で数十冊、作品によっては200冊売れることもある。入荷数が少ない店では1日で品切れということも珍しくない。ところが追加注文を出してもそれが店頭に届くころには、ぴたりと動きが止まってしまう。新刊入荷をいかに確保して売るかが勝負で、その極端な売れ方から棚のスペースは大きくとらずに、新刊のみ売り切りという一般書店も多い。
電子書籍、とりわけケータイ読書の世界で、現在コミック以上に勢いがあるのが、このボーイズラブである。書店店頭では恥ずかしくて買えないからではないかという見方もあるが、本質的な理由はほかにあると考える。
ボーイズラブでは、性描写を含む場合でもセクシャリティよりメンタリティが優先されている。もともと1976年に小学館の「週刊少女コミック」で連載が開始された『風と木の詩』(竹宮恵子著)の多大な影響を受けて発展してきたといわれ、ストーリー構成やキャラクターの立て方など、初恋をテーマに扱う少女マンガの手法がほぼ踏襲されている。最近では年齢層も上がって40代女性の愛好者も現れはじめているが、購読者層は圧倒的に10代女性。従来ボーイズラブはティーンが買いやすいよう、少女マンガタッチなイラストを表紙に用いて過激な内容も包み隠してきた。しかし「腐女子」であることを公言する風潮がまかり通る昨今、彼女たちがはたしてボーイズラブを恥と感じているかどうかは疑問だ。
またボーイズラブ作家は多作である。何かのきっかけでその作家にハマり過去の作品をさかのぼって読みたくなっても、既刊の市場在庫が少ないため、読者はインターネットやケータイに流れる傾向があるようだ。特にケータイ読書の場合はコンテンツ代金が携帯電話料金と一緒に請求されるため、クレジットカード決済を基本に構築されたオンライン書店よりずっと買いやすい。売れる理由のひとつだろう。
今やケータイ読書の世界にはBL専門店まで出てきているほど勢いがある。特に人気が高いのは小学館のパレット文庫のシリーズ。『きみはかわいい僕の奴隷』(南原兼著・こうじま奈月イラスト/小学館)をはじめとする「おにきゅん」(鬼畜で胸きゅん、の意)的作風のものがよく売れている。
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「ケータイ読書トレンドウオッチ」は今回から「デジタル読書トレンドウオッチ」にタイトル名を変更いたしました。ケータイだけでなくパソコンやPDAなどを含め、広がりつつあるデジタル読書の世界の最新動向をお届けします。