先月8月24日、冥王星が「格下げ」されたというニュースがいっせいに報じられた。前日の「太陽系惑星12個に?」といった内容から一転。大きな波紋を呼んだ。
夏休み中子どもたちの来場で賑わう科学館や各種展示施設、来年度の教科書表記変更など、教育関連の企業や団体はその対応に追われた。占星術の世界にも問い合わせが押し寄せた。ディズニー社に至ってはこれに不満を表明。ご存じミッキーマウスの愛犬キャラクター・プルートは1930年生まれ。「冥王星」(英語でPLUTO)の発見にちなんで命名されたものだからだ。
個人ブログやSNS、掲示板等の書き込みも多かった。このニュースに対する関心の高さがうかがえる。
松本零士氏のマンガの影響を受けた30代以上であれば、『銀河鉄道999』(松本零士著/小学館 初出は少年画報社「週刊少年キング」)や『宇宙戦艦ヤマト』(松本零士著/秋田書店)の冥王星でのシーンを思い出した人も多いだろう。冥王星は太陽系の中ではもっとも遠い星だ。『銀河鉄道999』では旅の分岐点として、『宇宙戦艦ヤマト』では最前線の戦闘基地として、それぞれ描かれている。今回のニュースについては、作者の松本零士氏のコメントも複数のメディアで見受けられた。
『銀河鉄道999』では、冥王星は特に情緒的に登場する。この先旅をつづけるかどうか/生身の身体か機械の身体か、といったいくつかの選択を旅人に迫る「さいはての星」として描かれているのだ。シャドウという名の女性が過去の美しい自分の身体と決別することができずにその墓を守りつづけるという設定があり、重要な局面で判断できない人の心の弱さや迷いをテーマに印象的なエピソードに仕上がっている。
また氷の墓標でメーテルがうなだれる姿は、作品の中でも最も心に残る名シーンのひとつであろう。
冥王星騒動は、その後も「惑星」を定義した国際天文学連合(IAU)に対し、米航空宇宙局(NASA)や宇宙科学者の中に反対の声があり、まだ混乱がつづくのではないかと思われる。
学術的な定義とは全く別のところに、私たちがこれまでイメージしてきた「冥王星」はある。冥王星そのものがなくなるわけでは決してないし、作品の質がこれによって損ねられることはないと信じたい。
なお『銀河鉄道999』はケータイコミックとして全話販売されており、冥王星のエピソードは第6話「迷いの星の影」に収録されている。デジタル読書やケータイ読書なら、1話のみを切り取って読めるのも魅力だ。