読書には、エンタテインメントとしての側面と、文化的・教育的な側面とがある。
読書推進運動というのはまさしく後者の文化・教育的側面からのアプローチで、4月には「子どもの読書の日」、夏休み課題図書、朝の読書運動などはその取り組みのあらわれである。この時期10月27日から11月9日までの2週間は読書週間で、書店に行けば「全国書店くじ」が実施され、古書の街・神保町ではブックフェスティバルが開催されるなど、読書の秋らしいイベントが散見する。
デジタル読書、とりわけこの数年急激に市場が伸びたケータイ読書の場合、エンタテインメント性が強かったが、ここへ来て読書推進的な動きも見られるようになってきた。
最近のトピックスはふたつ。ひとつはNTTグループが携帯電話を含めた各種端末に向けて、絵本の配信を開始するというもの。もうひとつはauで展開する、大日本印刷運営の電子書店「よみっち」において、講談社の人気児童書・青い鳥文庫がケータイでは10月から一定期間独占的に配信されるというものである。
青い鳥文庫の創刊は1980年。以来「クレヨン王国」シリーズ、「パソコン通信探偵団ノート」シリーズなどの名作を生み出してきた。
うち「クレヨン王国」シリーズの発祥は、青い鳥文庫誕生よりずっと以前の1965年にまで遡る。単行本で発行された「クレヨン王国の十二か月」(福永令三著/講談社)を、三木由紀子氏の絵を添えて文庫創刊時のラインナップに加え、以後続編を文庫で刊行。シリーズ累計で500万部を超えるロングセラーとなった。今年9月には講談社文庫でも発行され、実に40年以上にわたって親しまれてきていたストーリーだ。かつてこのシリーズで育ってきた子どもたちの中には、当時と同じくらいの子ども父親・母親となっている人も多いだろう。
ロングセラーの児童書には、子どもを飽きさせないように読ませる工夫が随所に盛り込まれている。大人が久しぶりに読み返してみても、子どものころのワクワクした気持ちがよみがえってくると同時に、当時は気がつかなかったテーマの深さにあらためてはっとさせられることもある。たとえそのデバイスが紙ではなく携帯電話だったとしても、親子のコミュニケーションを深める役割を担うことができたら、本を読むという以上の付加価値も生まれてくることだろう。
ケータイ読書の世界における絵本や児童書配信はまだ実験的な段階で、商用としてどこまで成功するかは未知数である。しかし携帯電話がこれだけ10代にも浸透してきた昨今、なかなか本を読もうとしない子どもたちに対する読書推進ツールとして有効に機能することを期待したい。