今年もいよいよ押し迫ってきた。12月に入ると、世相や流行を反映する言葉、漢字、川柳の選定から10大ニュースまで、この一年を振り返るイベントが目白押しだ。先陣を切る形で毎年12月1日に発表されるのが『新語・流行語大賞』で、今年は「イナバウアー」と「品格」が大賞を受賞した。
ノミネートされる用語にはIT用語も含まれている。トップ10入りした「mixi」のほか、「You Tube」など、CGM(Consumer Generated Media)、いわゆる利用者がつくるメディアが候補に挙がった。
選考テーブルには上がらなかったものの、「Web2.0」という言葉も、今年急速に普及した用語である。概念先行型で定義もあいまいなまま、今さらWeb2.0について聞けない空気であるが、そんな人にぴったりな本を電子書店パピレスの新刊案内で見つけた。タイトルはズバリ『Web2.0殺人事件 』(岡部敬史著/イーストプレス)である。2006年11月、書籍発売からまもなくPC・ケータイともデジタル読書向けに配信された。
「mixi」で嫌いな部長から「マイミク」を強要され「mixi疲れ」になった、「ブログ」の「炎上」が元で殺人事件が起こった、「You Tube」に誘拐動画がアップデートされた、「はてなブックマーク」を使って事件を解決していく、など、Web2.0的トピックが満載だ。殺人事件と いうタイトルがつくほどミステリー仕立てにはなってはいないが、謎解きの手法を用いて、わずか10歳の少年・寧人くん(ネットくん、と呼ばせたいのだろうか?)がアナログおじさんたちに最新ウェブサービスの解説をするという試み。ウェブサービスに詳しくない人は、子どものころに読んだ学習教材の副読本をイメージするとよい。逆に詳しい人ならば、そこで紹介される裏技や事件のモデルにニヤリとすることだろう。
荒唐無稽と思わせて、ラストシーンで裏切られる。肩の力を抜いて楽しんで読める、よくできたエンタテインメント作品だ。企画に脱帽。
著者はブログ評論家。『このブログがすごい!』(別冊宝島編集部編/宝島社)の編集や『ブログ進化論ーなぜ人は日記を晒すのか』(講談社)の著作がある。
なお、大賞を受賞した「品格」の火付け役になった『国家の品格』(藤原正彦著/新潮社)もデジタル読書に対応している。