ここから本文エリア

RSS

現在位置:asahi.com>BOOK>デジタル読書トレンドWatch!> 記事

文・落合早苗

2ちゃん発、人前で読んでは「だめー☆」 『姉ちゃんの詩集』

2006年12月25日
[評者]落合早苗

 一般的に、詩集というジャンルはなかなか売れない。

 ところが、ネット書店で予約受付を開始したと同時に軒並みランキング上位に浮上した作品がある。12月20日に発売されたばかりの『姉ちゃんの詩集』(サマー著/講談社)だ。

 今年10月末、2ちゃんねるで「姉ちゃんの自作詩集発見した」というスレッドが盛り上がりを見せていた。弟が本人に内緒で、姉が幼いころに書いた詩を一篇ずつアップしていくというものだ。詩集といっても「姉ちゃん」にとっては、日記のようなものだったろう。度がすぎて自分をからかったお父さんに「りこんします」といってみたり、両親も家族も友だちもみな大好きという気持ちを「私は浮気な魔性の女…」と表現してみたり。きっと今日学校で体験したであろうこと、読んだであろう本のことなどを、素直に、時にシュールに、あるいはブラックに綴っているようだった。その無防備なほどの剥き出しの感性が反響を呼び、ブログやmixiなどでもたちまち話題となった。

 本作品はそれを受けて緊急出版されたものだ。デジタル読書向けにも、au対応「よみっち」などで同時発売された。

 本家の2ちゃんねるやまとめサイトなどでは、詩につづくレス群も詩に負けない力を持っていた。今回の書籍化・電子書籍化にあたり一読者としてもやや不安だったのは、それらのレスが削がれ『姉ちゃんの詩集』単体でそのよさが伝わるかどうかということだった。

 しかしそれは全くの杞憂だった。多くの「名無しさん(以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします)」のレスを、マンガ家の吉田戦車氏による「まえがき」が代弁してくれたように思う。また、各章のおわりに「姉ちゃん」の書き下ろしエッセイが添えられ、弟のことや詩を書いたころの心情などが語られて、子どものころの「姉ちゃん」と大人になった「姉ちゃん」とのコントラストが鮮やかな印象に仕上がっている。

 もちろん、本になっても「姉ちゃんの詩」のパワーは健在だ。電車の中やカフェやレストランなど、公共の場所で読むのは、「フツーにだめー」な詩集。今年最後に楽しい話題を提供してくれた作品だ。

hon.jp

ここから広告です

広告終わり

電子書籍を探すならhon.jp

プロフィール

落合早苗(おちあい・さなえ)
 株式会社hon.jp代表取締役社長
 学習院大学文学部卒。出版社・IT関連サービス会社等を経て2004年3月インプレス(現・インプレスホールディングス)入社。同月設立の100%子会社リーディングスタイル(現・hon.jp)に出向。丸善丸の内本店の電子書籍体験コーナーの運営や表参道のカフェを使ったケータイ読書プロモーションを企画実施。2006年10月より現職。日本ペンクラブ会員。日本出版学会会員。

このページのトップに戻る