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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>デジタル読書トレンドWatch!> 記事 文・落合早苗 あなたは笑えますか? 『ビジネス版 悪魔の辞典』2007年02月05日 企業での不祥事が相次いでいるが、もっと身近なところで「こんなことが許されるのだろうか?」という場面に出くわしたことはないだろうか。 同僚、上司、他部署の担当者など、ビジネス上でのおつきあいでは、建前と本音、理想と現実、「いってることとやってること」に落差が生じる。その溝を自分で考えて埋めていかなければならないのが、宮仕えの悲しい処世術だ。矛盾を問うたところで、一蹴されて終わるか、もっともらしいビジネス的な用語で武装されて返されるのがオチだ。 もしもその「ビジネス用語」をはぎ取ってしまったらどうだろう。自分も宮仕えだが、上司や取引先の担当者もまた宮仕えだ。その本音の部分が見えてくるかもしれない。 『ビジネス版 悪魔の辞典』(山田英夫著)は風刺に満ちたビジネス用語解説書である。1998年メディアファクトリーから発行され、2002年に日本経済新聞社より文庫化、2006年にはようやくデジタル読書の世界にもお目見えして、現在は文庫版を底本に電子書籍としても読めるようになっている。 本書は1911年に米国で発行されたアンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』(The Devil’s Dictionary:その起源は1881年とされ、芥川龍之介の作品にも影響を与えたといわれる)の、いわばパロディ。元ネタの方は、日本国内では1964年西川正身氏の訳による岩波書店版が最も古く、その後複数の出版社でも発行されつづけているロングセラーだ。 本書『ビジネス版 悪魔の辞典』は用語解説の体裁をとりながら、ビジネスで出くわす歪んだ矛盾を解決するヒントを記すものだ。人事・経営・マーケティングなどの13項から、実質を伴わない用語を抽出してアプローチする。「取締役」とは誰を取り締まるのか(あるいは誰に取り締まられるのか)といった素朴なものから、「戦略的に」などスピーチの場面でよく耳にする(あるいは口にする)ものまで、シニカルな内容に仕上がっている。初出が1998年のため、Information Technologyの項などにはやや古さも感じるが、解説の巧みさに思わず膝を打つことだろう。大企業病に陥っている人であっても、これが笑えるうちはまだ大丈夫。多分。 本書に限らず、マーケティング用語などを眺めていると戦争を想起させるものが案外多い。ビジネスはある意味戦いで、清廉潔白ではいられないこともたしかではある。が、たまには自社や自分を客観的に見ることも必要で、日々の疲れたアタマには、深刻になりすぎないこれくらいの毒がちょうどよい中和剤になるかもしれない。
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