ここから本文エリア

RSS

現在位置:asahi.com>BOOK>デジタル読書トレンドWatch!> 記事

文・落合早苗

ケータイ小説の女王、降臨 『この世の隅』

2007年03月19日
[評者]落合早苗

 「新潮ケータイ文庫」に、ケータイ小説の女王が帰ってきた。2007年1月より、内藤みか氏による書き下ろし長編『この世の隅』が配信されている。全100話の予定だそうだ。

 内藤みか氏は、2003年12月から「新潮ケータイ文庫」で配信された『いじわるペニス』で一躍脚光を浴び、その後同じ「新潮ケータイ文庫」で2004年10月からの『ラブリンク』をはじめ、ガールズウォーカーやライブドアモバイル、au本のポータルサイト「EZ Book Land!」など、この数年で次々と活躍の場を広げてきた。プロットや各種設定は各サイトのユーザー層に合わせたものになっており、恋愛小説というジャンルは共通するものの、ストーリーそのものに類似点はあまり見受けられない。ただし、「新潮ケータイ文庫」「ライブドアノベルス」など同じ媒体内での新作は、過去の作品のテイストを残したものになっている。

 作品の印象はそれぞれのサイトで違うのだが、文体や技術といったもので引っ張ってアクセス数を稼いできた。ケータイ向けの小説作法というものがあるなら、それを確立した数少ない作家といえるだろう。

 「新潮ケータイ文庫」上に約1年ぶりに復帰した本作品は、子持ち、バツイチのイラストレーターの女性が主人公。日々の悩みを打ち明けることもなく必死に仕事と子育てを両立させる中で、3人の男性とのあいだで揺れる心情が描かれている。第30話を超えたあたりから展開に一気に弾みがついてきた。ずっと秘めた想いを無意識に告げてしまうシーン(第35話)などは、読者にも唐突すぎて主人公と同様に戸惑う。固唾を飲んで翌日の配信を待っても全くちがうシーンではじまり、毎度のことながらいい意味で期待を裏切られる。今後のストーリーはいよいよ予測不能となってきた。内藤ワールド炸裂の予感だ。

 ケータイ小説というと、最近では『恋空』(美嘉著/スターツ出版)『赤い糸』(メイ著/ゴマブックス)などに代表されるコミュニティ発の作品の売れ行きが注目されているが、その一方で作家が新しい表現の場として発表する作品も増えてきている。ケータイはまだまだ可能性を秘めた文字メディアだ。

hon.jp

ここから広告です

広告終わり

電子書籍を探すならhon.jp

プロフィール

落合早苗(おちあい・さなえ)
 株式会社hon.jp代表取締役社長
 学習院大学文学部卒。出版社・IT関連サービス会社等を経て2004年3月インプレス(現・インプレスホールディングス)入社。同月設立の100%子会社リーディングスタイル(現・hon.jp)に出向。丸善丸の内本店の電子書籍体験コーナーの運営や表参道のカフェを使ったケータイ読書プロモーションを企画実施。2006年10月より現職。日本ペンクラブ会員。日本出版学会会員。

このページのトップに戻る