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文・落合早苗

芸は身を助く、ビジネスでも知識は身を助く 『会社入門レッスン サラリーマンドリル』

2007年03月26日
[評者]落合早苗

 今年もまた新入社員を迎える季節がやってくる。通勤電車や街で見かけるまだ身体に馴染まぬ真新しいスーツ姿は初々しい。日ごろは仕事に忙殺されてすっかりくたびれていても、かつて自分にもああいう時期もあったのだな、と微笑ましくなる。同時に、彼らに恥じない先輩でありたいものだな、と気持ちも引き締まる。

 この時期は書店でもビジネスマナーや言葉づかいなど、新社会人向けのコーナーが目立つ。わざわざ本を買ってまで…となんとなく敬遠したくなるかもしれない。特に本好きであれば、文芸・人文、あるいはコミックで占められた自分の書棚に、入門書的(しかも「常識」だの「マナー」だの)な文字列を含むものは野暮だし並べたくない心理も働くだろう。それでも敢えて1、2冊は通読することをおすすめしたい。どうしても興味が湧かないのなら、パソコンやケータイなど電子書籍で読み捨て感覚で目を通してみるとよい。新入社員ならば『会社入門レッスン サラリーマンドリル』(サラリーマンドリル編集委員会/東京書籍)あたりがよいだろう。

 本書は会社員が最低限知っておいた方がよいと思われる知識のうち、50問がドリル形式で出題される。その分野は幅広く、言葉づかい/ビジネスマナー/冠婚葬祭/税制や労働基準法などから、特に初心者向けのものが厳選されている。マナー本というのはいわゆる常識といわれるものの最大公約数について述べたものと考えると理解しやすい。その多くはすでに知っていることについて書かれているものだ。しかし知らないことももちろんある。その「知らないこと」が落とし穴になることがあるのだ。自分が弱いジャンルをまずチェックし、その後苦手なものをあらためてフォローすればよい。ただし一点だけ本書に対して苦言を呈するなら、せっかくの電子書籍なのに、採点がデジタルで集計されないということだろうか。

 入社時には研修がつきものだ。だがこの研修内容は企業や組織によってバラつきがある。会社概要や業界動向、そこで扱う商品やサービスについては手厚く教育されるが、いわゆる接遇やビジネスマナーまでプログラムに組み入れている企業はどれくらいあるのだろうか。何か失礼なことを言った/行なったとしても、会社や組織というのはその教育を怠ったことは顧みず、往々にして「常識」という名目で個人を責めるものだ。会社というのは、残念ながらそれほど親切なものではない。

 芸は身を助く、というが、ビジネスの世界では知識やスキルだけでなく、人柄や立ち居振る舞いまでが身を助くことがある。企業文化や業界文化により不要な知識もあるだろうが、すでに社会人として評価されている人であっても、一生に一度くらいこれらのマナー本を読んでみても、決して高い投資ではないだろう。

hon.jp

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プロフィール

落合早苗(おちあい・さなえ)
 株式会社hon.jp代表取締役社長
 学習院大学文学部卒。出版社・IT関連サービス会社等を経て2004年3月インプレス(現・インプレスホールディングス)入社。同月設立の100%子会社リーディングスタイル(現・hon.jp)に出向。丸善丸の内本店の電子書籍体験コーナーの運営や表参道のカフェを使ったケータイ読書プロモーションを企画実施。2006年10月より現職。日本ペンクラブ会員。日本出版学会会員。

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