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文・落合早苗

子供は読んじゃいけません 『起動戦士「濡れ男」』

2007年07月02日
[評者]落合早苗

 『恋空』(美嘉著/スターツ出版)『赤い糸』(メイ著/ゴマブックス)などのコミュニティサイトから発信されたいわゆる「ケータイ小説」しかり、携帯電話向けに有料配信されている電子書籍しかりで、ケータイで本を読むというスタイルが定着しつつある。各種媒体での紹介記事/コーナーもずいぶん目につくようになった。90年代からブレイクするといわれながらなかなかブレイクできず、ようやくこの数年携帯電話を中心に急速に拡大しつつある市場を実感できるようになった業界にとって、次に期待するものは「電子書籍の印税だけで食べていけるだけの作家を生み出すこと」であろう。

 それにもっとも近いといわれる作家が、ケータイ読書ではおなじみの春乃れぃ氏だ。2005年4月『恋愛博打〜ヤル前に読め!(;゜Д゜)』のデビュー以来、新刊は軒並みランキング入り。2006年11月には『モテれ。』でファン待望の初の書籍化を果たし、2007年2月の『魔性れ。』を経て、6月にはケータイ向けコンテンツの中でもベストセラーの類いに入る『起動戦士「濡れ男」R−20指定。子供は読んじゃいけません。〜女のココロとカラダの両方を濡らせない男たち』(書籍では『濡れ男―NUREO』と改題)も書籍化された。売れ行きもそれぞれ堅調な様子だ。すでに電子書籍の印税だけでも贅沢しなければ、という条件つきでそこそこ食べていけるレベルにまで来ていた春乃氏も、この3作でじゅうぶん食べていけるレベルになっていくことだろう。7月20日には他の出版社からも女性向けの書籍が発行される予定だそうだ。

 くだんの『濡れ男』といえば、フザけたタイトルだが、中身もフザけているといえばフザけている。脱いでみなければわからない男と女の文字通り赤裸々な営みを、毒と茶目っ気をたっぷり含んだ文体でばっさり斬っている。サブカル的内容でありながら、それぞれを短編エッセイとして読ませてしまう力はさすがという感じ。デビュー作と比べてみると飛躍的に技量が上がってきている。著者もまた、編集者だけでなく読者にも育てられているのだ。

 ケータイ向けコンテンツでも、紙の書籍でも、春乃氏作品は新刊が出るごとに既刊の売れ行きも上がる。読者を拡張しつづけている。今度の新刊『濡れ男―NUREO』もしかりで電子書籍版もまたランキングに返り咲いた。お下品な話であるにはちがいないので、店頭で買うのが恥ずかしい方はこの機会にぜひ電子書籍で。

hon.jp

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プロフィール

落合早苗(おちあい・さなえ)
 株式会社hon.jp代表取締役社長
 学習院大学文学部卒。出版社・IT関連サービス会社等を経て2004年3月インプレス(現・インプレスホールディングス)入社。同月設立の100%子会社リーディングスタイル(現・hon.jp)に出向。丸善丸の内本店の電子書籍体験コーナーの運営や表参道のカフェを使ったケータイ読書プロモーションを企画実施。2006年10月より現職。日本ペンクラブ会員。日本出版学会会員。

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