2008年4月1日
つい先日まで、袴姿に卒業証書を手にしていた女性をよく目にした。そんな彼女たちも、今日は慣れないスーツ姿とやや緊張した面持ちで入社式を迎えているのだろう。4月は社会人にとっては異動の、そして学生にとっては進学や就職のシーズン。別れと出会いが同時に訪れる季節である。
『終業式』(姫野カオルコ著/角川書店)は、20年にわたる友情を描いた作品。4人の登場人物を軸に、書簡の往来のみで展開されるストーリーである。初出は1996年4月、光文社から発行された単行本『ラブレター』。1999年3月新潮社より『終業式』と改題のうえ文庫化、その後2004年2月に角川文庫で再版されて、2007年10月に電子書籍として配信が開始された。
体育祭後、喫煙で学校から謹慎処分を受けた同級生の噂話から、物語ははじまる。授業の合間をぬって、1日のうちに何度も友達同士のあいだを行き来するメモは、やがて進学して別の道をたどりはじめたあと、手紙や葉書、あるいはFAXへと形を変えてゆく。時に新生活の報告がなされ、時に恋心を打ち明けられ、もっとあとになってからでは結婚生活の苦悩が綴られていく。かつて感情を剥き出しに書きなぐっていた少年少女たちの手紙は、年を経ていくにつれ、投函されずに破棄されるものが増えていく。そして書きかけの手紙と書き直した手紙との対比が、差出人の逡巡のあとを見せ、彼らの友情や愛情をより深く、よりやさしいものにしてくれている。
書簡形式のため、また「ケータイ」という現代のポピュラーな通信媒体を用いていることも手伝ってか、読み進めるほどに登場人物たちを自分の隣人のように身近に感じるようになる。彼らとともに自分自身の軌跡を振り返ると、長い歳月を経ても色あせることのない友情がいつのまにか育まれていたことに、それ自体が小さな奇跡なのかもしれない、とかけがえのないものに思えてくる。旅立ちの季節におすすめの一冊。
著者:姫野 カオルコ
出版社:角川書店 価格:¥ 620
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ウェブ上で流通し、PCや携帯電話などのデジタル機器で読める書籍のこと。文芸などの文字もの・コミック・写真集とジャンルは多岐に渡る。ウェブサイトからダウンロードして読むタイプのものと、オンラインで閲覧するストリーミングタイプのものがある。

株式会社hon.jp代表取締役社長
学習院大学文学部卒。出版社・IT関連サービス会社等を経て2004年3月インプレス(現・インプレスホールディングス)入社。同月設立の100%子会社リーディングスタイル(現・hon.jp)に出向。丸善丸の内本店の電子書籍体験コーナーの運営や表参道のカフェを使ったケータイ読書プロモーションを企画実施。2006年10月より現職。日本ペンクラブ会員。日本出版学会会員。
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