ツイストを踊らせたら、私も相当なもんだぜ、という話は以前にも書いた。もうひとつ自慢させてくれ。原曲はポール・アンカがヒットさせた「電話でキッス」の日本語版を歌わせたら、私はこの国で一、二を争うほどうまい。
とエバッても、ダニー飯田とパラダイスキングの佐野修が歌った「電話でキッス」をほとんど誰も覚えていないから、佐野修そっくりに歌っても評価の仕様がない。なんとも悲しい特技だ。
そんな心理を見透かしたかのように、オールディーズのCDが付いた「ゴールデン・ポップス」(デアゴスティーニ刊)の創刊号は63年のヒット曲集だ。特価490円はうれしいが、記事の部分が内容、ページ数とも薄いのが悲しく映る。もう少し高価でもよいから中身を充実させてほしい。
とはいえ、63年の出来事を毎月2項目ずつ記した企画なぞ、眺めているだけで感慨ぶかい。1月・日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』放送開始。11月・ケネディ大統領、暗殺。12月・プロレスラー、力道山が刺傷事件がもとで死亡。まだアメリカが泥沼化したベトナム戦争も、若者の麻薬禍も知らなかった最後の年が63年だ。日本人の多くも高度成長の影の部分に気づいていない。
年が明けるとすぐ、アメリカも日本も、ヒットパレードはイギリスの新人、ザ・ビートルズによって席巻される。団塊世代というとビートルズ世代だと思われている。本人たちまで錯覚しているが、63年まで私たちが夢中になって聴いたのは、この本のCDに収録された、甘くて切ない、ビートルズの出現で一夜にして懐メロになった、悲しいポップスだった。「オレたちビートルズで育った世代はさあ」という団塊オヤジの話は、眉にツバして聞いてくれ。