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「美しい人体図鑑 ミクロの目で見る細胞の世界」 美は細部に宿る

唾液レンサ球菌と大腸菌

 約60兆個もの細胞でできているという私たちの体。「細胞」とひと口にいっても、さまざまな姿をしています。
 この図鑑では、人間の目では見ることのできないミクロの視点から、人体を形成する多種多様な細胞152点の姿をクローズアップ。人体の細胞や器官だけにとどまらず、病気の原因となるウイルス、抗生物質などの薬の結晶までも取り上げています。

 白血球の一種「マクロファージ」が異物を捕食する決定的瞬間や、ストレスを感じると分泌される「アドレナリン」の結晶は見どころの一つ。ふだんから私たちの体内で起こる変化をビジュアルで認識できるのが新鮮です。

異物を捕らえようと、「偽足」と呼ばれる紫色の部分を伸ばすマクロファージ
異物を捕らえようと、「偽足」と呼ばれる紫色の部分を伸ばすマクロファージ

 個人的なお気に入りは、テニスボールのような唾液レンサ球菌とジェリービーンズみたいな大腸菌。こんなにポップでカラフルな菌だったら、体内にいても許せてしまいそう。
 事実、過度な抗菌や除菌はNG。ヒトの体には、800~1000種もの細菌・常在菌が数百兆個もいて、無菌状態でいられるのは胎児の間だけなのだとか。こんなトリビア的なミニコラムも随所にちりばめられています。

 ページをめくるごとに初めて出会う神秘の数々。それらが自分自身の内に秘められているのだと思うと、改めて自分の体が愛おしく思えてくる一冊です。