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「系外惑星と太陽系」書評 新たな想像を必要とする対象

評者: 円城塔 / 朝⽇新聞掲載:2017年04月23日
系外惑星と太陽系 (岩波新書 新赤版) 著者:井田茂 出版社:岩波書店 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784004316480
発売⽇: 2017/02/21
サイズ: 18cm/200p

系外惑星と太陽系 [著]井田茂

 夜空に浮かぶ星のまわりにも、惑星が回っているのかどうか。
 実に1995年になるまでこの問いの答えはわからなかった。現在では、それ以前の観測技術によっても太陽系とは別の惑星系の発見が可能だったとわかっている。
 観測のためには、惑星系がどのように形成されるのかという仮説が欠かせない。仮説には、ときに思い込みが混入する。
 遠い星を見上げてはじめて、自分たちの暮らす太陽系が特別な存在なのかどうかという比較が可能になってくる。他の惑星系の発見により、これまで信じられてきた太陽系のできかたにも疑問が投げかけられることになった。我と我が身を眺めるだけでは生まれることのなかった疑問だ。
 そこに何が見えるかという予想がなければ、新しいものは見えない。惑星系は想像の力を駆使してはじめて見えるようになった存在であり、まだまだ新たな想像を必要とする対象のようである。