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「金利と経済」書評 将来世代に禍根を残す恐れ

評者: 加藤出 / 朝⽇新聞掲載:2017年04月30日
金利と経済 高まるリスクと残された処方箋 著者:翁邦雄 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:金融・通貨

ISBN: 9784478101681
発売⽇: 2017/02/17
サイズ: 19cm/262p

金利と経済-高まるリスクと残された処方箋 [著]翁邦雄

 インフレ率を2年で2%に引き上げると宣言して日銀が異次元緩和策を始めたのは4年前のことだった。だが、イオンの岡田元也社長が「脱デフレは大いなるイリュージョン(幻想)」と最近語ったように、期待通りの効果は現れていない。
 著者は同政策の危険性を一貫して指摘してきた日銀出身のエコノミストである。本書でも同政策の「挫折」の原因を、自然利子率や人口減少などの観点から平易な表現で解説している。
 異次元緩和策を政府側から強く推奨してきた浜田宏一内閣官房参与は「金利がゼロに近くては量的緩和が効かなくなる」「目からウロコが落ちた」と「変心」を見せた。しかし日銀はインフレ目標達成まで出口に向かうことができない。
 この政策による国債発行金利の大幅な低下は、「財政規律を大きく破壊している」。これが長期化すればするほど、我々の将来世代に大きな禍根を残す恐れがあることが、本書を読むとひしひしと伝わってくる。