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星野源さん「いのちの車窓から」インタビュー ひとりではない瞬間の、大切さ

 出演したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」は、主題歌「恋」とそのダンスも含め社会現象に。いまや「時の人」だが、「口をぽかんと開けてみていて、なんだかすごいなって」。ふわりとした、あの笑顔で言う。「ちょっとだけひとごとのような」感じらしい。
 学校になじめずにいた中学時代。音楽と演劇に出会う。2000年にバンド「SAKEROCK」を結成、03年から劇団「大人計画」の舞台にも立つ。「場所はニッチでも、わかってくれる人だけが聞いてくれればいいと思ったことはない」。「星野源が好き」と表明することに「サブカル」や「文化系」という言葉がついて回ったのは、もう過去の話だ。
 文筆家としても注目を集める。以前は、「自分のことを伝えようとする文章が多かった」というエッセー。変化のきっかけは、12年末にくも膜下出血で倒れ、1年近くに及んだ断続的な療養だ。その間、ほとんど人と会わなかった。「自分と向き合わざるをえない時間を長く過ごし、エゴを感じることに飽き飽きしてしまった」
 本書は、復帰後の14年12月から今年2月までの雑誌連載に書き下ろしを加えた。連載期間は紅白初出場や「逃げ恥」出演と重なる。「はやらせようと作ったわけではなく、おもしろいと思ったものをやってきた。そこは全然変わっていないんです」。09年に刊行した初のエッセー集『そして生活はつづく』の最終章は〈ひとりはつづく〉。でも、「いろんな経験をして、一人なのは当たり前なのだ、もうわかった、と。一人ではない瞬間が大事に、印象深くなった」。今回は、〈ひとりではないということ〉で締めくくった。
 撮影現場でのエピソードや心の動きを淡々とつづる。「すごく新鮮で素直な文体にぱっと出会えた。見たものや自分の頭の中をそのまま描写する快感がある」。それは「癒やし」でもあった。
 あとがきには、こうある。「文章力を自分の欲望の発散のために使うのではなく、エゴやナルシシズムを削(そ)ぎ落とすために使っている人。それが僕の思う『文章の上手(うま)い人』です」(滝沢文那)=朝日新聞2017年04月02日掲載