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新書ピックアップ(朝日新聞18年4月7日掲載)

山内志朗著『目的なき人生を生きる』 

生きる目的や悪に対峙(たいじ)する正義などを求めがちな私たちの心性は、どこかへエスカレートしていく危うさを秘めている。がんばらず、ぐずぐずに生きるのもありではないか。〈人生は意味だらけだと考えることが、足元をつまずきの石だらけにする〉〈「目的のなさ」とは、欠如や空虚ということよりも、むしろ自由な空間ということであり、器の大きさでもある〉と著者はいう。“小さな倫理学”を唱える倫理学者が、目的や規範や快楽に還元されない人生を考える。(角川新書・886円)

枝廣淳子著『地元経済を創りなおす』 

観光や企業誘致で地域に入るお金が増えても、資材調達や住民の買い物、エネルギー購入などで出ていく方が多ければ、地域経済は潤わない。悪循環を断ち切る処方箋(せん)として、“注いだ水が出て行ってしまう穴”を見つけてふさごうという「漏れバケツ」理論に着目。発信地のイギリス郊外の町トットネスでの住宅供給や起業・投資など、素人の手による「新しい物語」への歩みも紹介する。(岩波新書・842円)

五十嵐泰正著『原発事故と「食」』 

福島産の食品汚染や健康被害をめぐる対立には、科学的なリスク判断、原発事故の責任追及、一次産業を含めた復興、エネルギー政策という課題が絡み合い、根深い対立と分断が生まれている。心理的抑圧や差別につながる問題も生まれた。多様性を増す社会で生産的な対話の場をつくりだすために何が必要か、社会学者が提起する。(中公新書・886円)

小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』 

老人ホームの介護職員や施設管理者として長年勤務した著者の最大のテーマは、「入居者と老人ホームとのミスマッチの解消」だという。そのために書かれたのが本書だ。介護保険導入後、複雑化する有料老人ホームの種類別特徴や職員の実態、決定的に重要なお金の話など、入居先の選択に役立つ情報を紹介する。(祥伝社新書・907円)