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池澤春菜が薦める文庫この新刊!

  1. 『行き先は特異点(年刊日本SF傑作選)』 大森望、日下三蔵編 創元SF文庫 1404円
  2. 『三惑星の探求(人類補完機構全短篇3)』 コードウェイナー・スミス著 伊藤典夫、酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫SF 1512円
  3. 『ガラスの靴』 エリナー・ファージョン著 野口百合子訳 新潮文庫 562円

 SFが好きだなぁ、としみじみ思う。想像のエンジンに点火し、この世界の向こう側を見せてくれる作品に出会うと、心底幸せになれるのだ。
(1)は毎年1冊ずつ出ている日本SF短編傑作選の2016年版。個人的お気に入りは全てと言いたい所だが、あえて選ぶなら高山羽根子「太陽の側の島」、上田早夕里(さゆり)「プテロス」、酉島伝法(とりしまでんぽう)「ブロッコリー神殿」。信頼できる編者によって編まれた、豊かさを増す日本SFの鳥瞰図(ちょうかんず)。
(2)は伝説的なSF作家による3冊組みの短編集の完結編。〈人類補完機構〉という壮大な叙事詩にちりばめられた物語は、もちろんこれだけでも成立している。ヒトがヒトであるために必要なものは、生きる意味とは。詩的で繊細、圧倒的なイメージ、心が震える美しさ。
(3)は今だからこそ読みたい童話。児童文学の名手が紡ぐシンデレラは、知っているようで知らない新しい手触り。美しいものと善きものをつめこんだ、読み終わると微笑(ほほえ)みが零(こぼ)れる物語。=朝日新聞2017年08月27日掲載