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「全裸監督 村西とおる伝」書評 閉塞感を吹き飛ばすカンフル剤

評者: 末國善己 / 朝⽇新聞掲載:2017年01月15日
全裸監督 村西とおる伝 著者:本橋 信宏 出版社:太田出版 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784778315375
発売⽇: 2016/10/17
サイズ: 20cm/708p

全裸監督―村西とおる伝 [著]本橋信宏

 アダルトビデオ(AV)の「帝王」であり、今では「前科7犯、借金50億」をウリにしている村西とおる。本書は、AV監督になる前から村西を知る著者による渾身(こんしん)の評伝である。
 村西は、福島県から上京し、水商売、英語教材のセールスマンを経て、修整が薄いビニ本のチェーン店を作るも逮捕された。その後AV業界に進出、実際にセックスする過激さで人気となるが、放漫経営と拡大路線で多額の借金を抱える。
 村西の人生は、ジェットコースターのように波瀾(はらん)万丈。村西が考案した斬新な演出の誕生秘話も満載で、約700ページの大著だが一気読み間違いなしだ。
 すべてが型破りの村西だが、24時間働き続けるモーレツぶりや、息子を名門小学校に入れる教育熱心さは、一昔前の典型的な日本人といえる。ただ常に前向きで、失敗しても諦めず次の手を考えるところは日本人離れしている。このバイタリティーは、閉塞(へいそく)感を吹き飛ばすカンフル剤になる。