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夢への道は始まっている 児童書作家・原ゆたかさん@和歌山市立川永小

 「川永小学校へようこそ」。手作りのくす玉で歓迎された、「かいけつゾロリ」で人気の児童書作家・原ゆたかさん。授業のテーマは「お話の作り方」だ。「どんなにたいへんなことか体験してもらいます」と原さんはにっこりした。
 まずは、ゾロリのかたき役、「博士」の顔を作る「キャラクター作り」だ。顔の部位が描かれた表から、それぞれがゲジゲジ眉毛、どんぐりまなこ、ゾウの鼻などを自由に選び、福笑いのように組み合わせる。「変な顔!」と、見せ合って、みんな大笑いだ。
 次に原さんが配った絵には、ゾロリを踏みつぶそうと、巨大ロボットを遠隔操作する博士の姿が。博士の姿には顔がない。「考えた顔を絵に描きこんでゾロリを助ける方法も考えよう」。原さんの案は、「ゾロリのお供、イシシとノシシが、おならの風圧でロボットの足を止める」だ。「さぁ、思いがけない助かり方を、いくつ出せるかな?」
 普段から物語作りに取り組んでいるという児童たちは、勢いよく鉛筆を走らせた。原さんはみんなの机をまわり、アドバイスしていく。ロボットをシャボン玉で包むという女子に「電波を遮断するシャボン玉にしたら? 博士が操作できなくなるよ」。
 鳥羽向日葵(ひなた)さんは、ロボットの足裏にテレビ画面を描きこんだ。踏みつぶされるかに見えたゾロリは、ただ寝そべってテレビを見ているだけというオチに、「私も思いつかなかった!」と原さん。「読者は次を予想しながらページをめくる。それを裏切る面白い話を考えなきゃいけない。途中で逃げたくなることもある」と苦労を語った。
 授業の終盤は「夢」の話になった。小学生時代からノートに漫画を描いて友だちに回覧していたという原さんは、「面白くてやっていたことが、作家の仕事につながっていた。みんなも楽しいと思えることをみつけて、きわめていってほしい。今からプロの道は始まっています」と語りかけ、作詞を手掛けたゾロリの映画のテーマ曲を聞かせた。タイトルは「夢は心のつばさ」。卒業を控える子どもたちへの応援歌になった。
 (岡沢香寿美)

 <授業を終えて>
 平心愛(ここあ)さん「原さんにアドバイスをもらいながら描くのが楽しかったです。絵がもっと好きになりました」
 岸田健吾さん「小学生から夢は始まっているという原さんの言葉が心に残りました。宝物の思い出になると思います」
     ◇
 原さん「なりたい職業に、どうすればなれるかを調べると、よりリアルに進む道が見えてきます。反対する人がいても、その人を説得できるほどの、強い意志も必要ですよ」

 ●和歌山市、全校336人、硲間(はざま)正子校長。6年生58人が授業を受けた。担当は有田和行先生、中西優美先生(1月開催)。=朝日新聞2018年2月26日掲載