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松田青子「ロマンティックあげない」書評 媚びない姿勢がフェア

評者: 中村和恵 / 朝⽇新聞掲載:2016年07月03日
ロマンティックあげない 著者:松田青子 出版社:新潮社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784103500117
発売⽇: 2016/04/22
サイズ: 20cm/221p

ロマンティックあげない [著]松田青子

 小気味いいテンポのお喋(しゃべ)りに、新鮮な批判精神が感じられるエッセイ集。話題はツイッターやネットニュース、アメリカのTVドラマや音楽、そして日々見聞きする、なぜか気になる小さなこと。映画館の座席配分、食堂やクリーニング屋の店員の言動、「写真はイメージです」という文言、「おもてなし」の蔓延(まんえん)。
 口調は軽妙でやわらかだが、切れ味は思いのほか鋭い。ことに女というものにまとわりつく「居心地悪いファンシーを、一つ一つ、さくさくと壊していく」あたりが痛快。小説や映画にいまだに「湧いてくる」白いワンピースの女という「問題」の指摘に、そうそう!と共感する人も多いのでは。
 そして批判するのと同じだけ、愛(いと)おしむ。テイラー・スウィフトが歌う「地味で奥手な女の子の片思いソング」を。マシュー・ボーン演出・男性主役のバレエ『SWAN LAKE』を。「好きすぎて」困ったことになるほど。温かい、でも媚(こ)びない姿勢がフェア。