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To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第1回 高田馬場(東京)

16's Stairing Steps Case:シックスティーンズ・ステアリング・ステップス・ケース

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

 高田馬場は学生街といったイメージが強い。数多くの専門学校があり、早稲田大学にも近い。学生の懐に優しいリーズナブルな店が並んでいる。

 そんな高田馬場で、入り口に「学生さんの来店は固くお断りしています」の看板をかかげているのが、「16's Stairing Steps Case:シックスティーンズ・ステアリング・ステップス・ケース」である。
 なぜ、「学生お断り」なのか? 
 その理由を店主の“いちろうくん”に尋ねたことはないし、客に学生かどうかを問いただしているところを見たことはないが、たしかにこの店に学生は似合わない。

 店の入り口は早稲田通りに面しているが、スライドドアをひくと目の前には細長い階段が現れる。店は2階なのだ。
 この階段を臆することなく上がってこられる学生がいるとすれば、それはそれでたのもしい。もしくは、無神経な学生に違いない。

 問題は後者である。私は、「学生お断り」という意味は「学生気分の抜けない無神経で子供じみた方はお断り」と解釈している。あなたが何歳であれ、酒場で大人の立ち居振る舞いが出来ないのであれば、この店は似合わない。

 なんて、ここまで読むと「気難しい店主なのかな?」とか「敷居の高い店なの……?」と思われる読者もいるだろう。が、そんな心配は無用である。
むしろ、フランクで、心が和み、落ち着いてビールが楽しめる店なのである。

 階段を登りきると左手にスタンディングのカウンターがあり、右手には背の高めのテーブル席が数卓ある。窓際にも席が用意されていて、早稲田通りを行きかう人や車を見おろすことも出来る。
 注文はカウンターでキャッシュ・オン・デリバリー形式。いい意味で放っておいてくれる。自分のペースで飲むことが出来るのでありがたい限りだ。

 この「16's Stairing Steps Case」は、基本的に「ベルギービールのお店」だ。(ベルギービール以外にはキリンのハートランドとベアードビールの樽生が用意されている)
 ベルギービールは、実に多彩で奥深い。
 ベルギーでは、中世の時代から修道院や地元の小さな醸造所で個性的なビールが造り続けられている。フルーツやスパイスを使ったビール、アルコール度数が10%を超えるビール、瓶内熟成のヴィンテージビール、野生酵母を使った酸味のあるビールなど……。
 ベルギービールは、日本人のビール観を崩壊させてくれる。

 「16's Stairing Steps Case」には、そんなベルギービールが並んでいる。
 スパイシーでフルーティーなベルジャンスタイル・ホワイトエール、ベリーを使ったフルーツビール、「おっ!」と思わせるレアなベルギービールの生樽がタップに繋がっている。
 そしてなによりも「ボトルの充実具合」が特筆ものだ。壁一面に並べられたビールは80銘柄を超えている。カウンター側にも並んでいるので、総数は100銘柄を超えるに違いない。ラベルを眺めているだけでもワクワクする。

 さらに! この店は“野球”を観ることが出来る。
 店の一角にモニターがあり、十中八九、カープ戦が流れている。
 店主のいちろうくんはカープファンなのだ。私はカープファンというわけではないが、カープには好意的な感情を抱いているのでストレスは無い。(笑)
 ベルギービールにヨーロッパのサッカーリーグではなく、日本野球を合わせるというミスマッチ(?)が愉快きわまりない。
 私は、この店のカウンターに置かれているプロ野球の選手名鑑や『広島東洋カープ語録集 ぶちええ言葉 』なんて本をペラペラとめくりながら、いちろうくんと野球談議するのが好きなのである。

 そのうえ! 流れている音楽も素晴らしい。1960年代後半から1980年代あたりのLP盤が回っている。CDではない。有線でもない。
 ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ウイングス、EW&F、クイーンといった“ちょっと古めの音楽”が流れている。

 ベルギービールと日本野球と懐かしいレコード。
 この三つの融合は、私にとって、実に素敵なペアリングなのである。

 高田馬場の「16's Stairing Steps Case」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。