「土俵の周辺」書評 角界の人生の分かれ道
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年03月15日
土俵の周辺
著者:岩崎 友太郎
出版社:白水社
ジャンル:スポーツ
ISBN: 9784560084151
発売⽇: 2015/01/17
サイズ: 20cm/238p
土俵の周辺 [著]岩崎友太郎
春場所たけなわ。日の当たる主役ではないが、相撲に深くかかわる人々を描いた。二十七代木村庄之助にみる行司の勝負勘。力士の動きに追われていては失格で、「自分で力士を追っていってこそ、決断力がつく」という。引退してちゃんこ屋を成功させた力士、大けがから復帰した力士など、人生の分かれ道をどう歩んだかもたどる。
印象深いのは、魁皇の引退相撲の際、国技館で相撲甚句を歌った大納川(だいながわ)憲治だ。32年前に廃業した元力士の登場は異例だが、その伝説的なうまさがゆえの依頼だった。「いつの日か、相撲甚句がお前の生活を支える日がくるかもしれないからな」と親方に勧められた若き日。そして、土俵を去った後の日々がかけめぐる。
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白水社・2592円