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「古地図が語る大災害」書評 日本人はどう向き合ってきたか

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年03月08日
古地図が語る大災害 絵図・瓦版で読み解く大地震・津波・大火の記憶 著者:本渡 章 出版社:創元社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784422250786
発売⽇: 2014/12/17
サイズ: 21cm/158p

古地図が語る大災害 [著]本渡章

 日本は地震と津波と火山の国。だから防災が必要だが、日本人は大災害にどう向きあってきたか。たとえばM8.6とされる江戸期の南海トラフ巨大地震「宝永地震」は被害が九州や静岡県まで広がり、1カ月半後には富士山も噴火した。その教訓を生かせなかったとされる「安政南海地震」でも、大津波が川を上った水都大阪の様子が古地図「大坂大津浪(なみ)図」でわかる。記録は他にも多く、鴨長明が『方丈記』で地震の恐怖を語り、秀吉が遭遇した大地震は歌舞伎「地震加藤」になるなど、古今の豊富な情報が興味深い。著者は大阪在住の作家で古地図愛好家。絵図や瓦版を通して大災害の史実を伝え、被災の記憶をどう持続させるか問いかける。
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創元社・2160円