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なぜ戦争詩を書いたのか

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年07月12日
忘れられた詩人の伝記 父・大木惇夫の軌跡 著者:宮田 毬栄 出版社:中央公論新社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784120047046
発売⽇: 2015/04/25
サイズ: 22cm/480p

忘れられた詩人の伝記―父・大木惇夫の軌跡 [著]宮田毬栄

 戦争に協力する詩を書いたとして、後に非難された詩人・大木惇夫。その生涯をエッセイストの次女が掘り起こした。
 戦いが嫌いで、軍一という本名すら嫌った叙情詩人が、なぜ戦争詩を書いたのか。
 著者は、その問いに答えを見つけようとする。国粋的な詩集の刊行は自身の詩全集の刊行を望んで出版社の取引に応じたのかもしれない。出征するにあたって「祖国のため」という納得が必要だったのでは。「愛国心という火種」を前に「詩人としての魂の発火を抑えられなかった」のではないか、と。大木自身は、弁明も説明もせず、沈黙を守った。ただ、もう「いかなる戦争をも受け容(い)れようとしなかった」という。
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中央公論新社・4968円