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新書ピックアップ(朝日新聞18年5月19日掲載)

角幡唯介著『新・冒険論』

 マニュアル化されたエベレスト登山はもはや冒険ではない。そう喝破する著者は、冒険を文明への批評的性格をもつ「脱システム」という身体的表現である、と定義する。本多勝一ら先人の常識を超えた挑戦をつづり、与えられた情報に依存するのではなく、「本質的なことはみな、いちどおれの頭で考えて、おれ専属の答を用意しておこう」と大江健三郎を引く。チベットや北極圏で極限を体験してきた冒険家による社会への問いかけの書。(インターナショナル新書・799円)

博報堂キャリジョ研著『働く女の腹の底』

 女性の社会参画が多様化する現在、OLやキャリアウーマンという言葉ではなく、広告に携わる女性プロジェクトで考案したのが「キャリジョ」。仕事や結婚・恋愛への意識の変遷を追うと、SNSが大きな影響を及ぼしていることがわかる。多様化する彼女たちを7パターンに分類、特徴をストーリーで紹介する。(光文社新書・972円)

森和也著『神道・儒教・仏教』

 明治維新後の近代化は江戸時代に準備され、現代の私たちの意識にも深く関わるという。江戸期、仏教は政権の権威付けに奉仕して擁護され、キリスト教排除も担った。儒教は、国家統治のイデオロギーになっていく。古典文学の研究から始まった国学は次第に宗教性が顕在化し、国家神道に連なっていく。様々な信仰が絡み合う江戸時代の思想、宗教を概観する。(ちくま新書・1188円)

小林恭子著『英国公文書の世界史』

 1100万点以上あるという英国国立公文書館の膨大な一次資料には、11世紀の土地台帳から、産業革命を背景にした蒸気機関車の見取り図、極秘協定だったオスマン帝国分割の地図、タイタニック号のSOSやスパイ関連資料までが保管されている。記録を通して、歴史の国イギリスの横顔を照射する。夏目漱石の居住記録や原爆開発の覚書など、日本ゆかりの文書も。(中公新書ラクレ・950円)