『ちいさいおうち』などで知られ、世代を超えて愛される絵本作家の全体像を豊富な図版で紹介するのが『ヴァージニア・リー・バートンの世界』(ギャラリーエークワッド編、小学館・2052円)。恐慌や戦争の嵐が吹いた20世紀の米国で、自立を目指した女性の軌跡でもある。
ページを繰ると、作品は女性へのエールに満ちていると改めて気づく。主人公であるスチームショベルや除雪車など、米国の発展を支えた機械はみな女性の名が付けられているのだ。『ちいさいおうち』の英語版の表紙には、「HER STORY(彼女の物語)」と記される。歴史(HISTORY)は男性の物語(HIS STORY)だけではない、との思いを込めて。
地元の主婦らと立ち上げたデザイン集団の手仕事は高く評価され、デザインの黄金比率などの理論も組み立てた。博物館に8年通って描きあげたという『せいめいのれきし』は、科学的な目を感じさせる。
関連展を東京・表参道のスパイラルガーデンで27日まで開催。入場無料。
(小川雪)=朝日新聞2018年5月19日掲載
編集部一押し!
- オーサー・ビジット 教室編 今を輝こう しなやかに力をつけてね 教育評論家・尾木直樹さん@高岡市立横田小学校 中津海麻子
-
- 杉江松恋「日出る処のニューヒット」 加速する冤罪ミステリー「兎は薄氷に駆ける」 親子二代にわたる悲劇、貴志祐介の読ませる技巧に驚く(第12回) 杉江松恋
-
- インタビュー 井上荒野さん「照子と瑠衣」インタビュー 世代を超えた痛快シスターフッドは、読む「生きる希望」 PR by 祥伝社
- インタビュー 「エドワード・サイード ある批評家の残響」中井亜佐子さんインタビュー 研究・批評通じパレスチナを発信した生涯 篠原諄也
- インタビュー きょうだいユーモア絵本「ぼくの兄ちゃん」が復刊! よしながこうたくさんインタビュー 子どもはいつもサバイバル 大和田佳世
- BLことはじめ BL担当書店員の気になる一冊【2024年1月〜3月の近刊&新刊より】 井上將利
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社