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現実とファンタジーのかけ橋

「青い月の石」

 伝承遊び歌から始まる冒険物語。少年ヨーストは、青い月の石を手に入れようと、いじめっ子のヤンと一緒に地下世界の王を追っていく。その途中で出会うイアン王子は、父王が地下世界の王と交わした約束を果たしにいくところだ。3人は、地下世界の王の末娘ヒヤシンタに助けてもらい、それぞれの任務を遂行して無事にもどってくるのだが、タブーをおかしたイアン王子は、最愛のヒヤシンタのことを忘れてしまう。今度は少女フリーチェも加わり、王子に記憶を取り戻させるための次の冒険が始まる。オランダ屈指のストーリーテラーが伝承物語のモチーフをふんだんに使い、豊かなイメージで現実とファンタジーの間に橋をかけた作品。(翻訳家 さくまゆみこさん)
 ★トンケ・ドラフト作、西村由美訳、岩波少年文庫、税抜き760円、小学校高学年から

「ホッキョクグマ」

 ある日「わたし」が読み始めた本は『ホッキョクグマ』。そう、この絵本。ホッキョクグマの生態について、読む子の目になり、感情移入しながら学べる、物語仕立ての科学絵本です。長い首、大きな足、2層になった毛のわけは? 狩りや食事はどんな風? 北の果てに暮らす野生動物との距離が縮まり、地球環境を考えるきっかけに。(絵本評論家・作家 広松由希子さん)
 ★ジェニ・デズモンド作、福本由紀子訳、BL出版、税抜き1600円、小学校中学年から

「やまのかいしゃ」

 寝坊したほげたさん。会社とは反対の電車に乗り、気づけば山奥の駅に。駅員に長靴を借り、山に登り始めると、なぜか同僚のほいさくんに会い意気投合。2人は「やまのかいしゃ」で働くことに。はちゃめちゃに見えるけれど、ほげたさんの心の持ちようは至極まっとうだ。こんな風に生きたい! 待望の再版。(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん)
 ★スズキコージ作、かたやまけん絵、福音館書店、税抜き1500円、5、6歳から=朝日新聞2018年5月26日掲載