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奥田英朗「我が家のヒミツ」書評 家族がいれば、なんとかなる

評者: 本郷和人 / 朝⽇新聞掲載:2015年11月22日
我が家のヒミツ 著者:奥田 英朗 出版社:集英社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784087716252
発売⽇: 2015/09/25
サイズ: 19cm/276p

我が家のヒミツ [著]奥田英朗

 人生には色々あって一人で生きていくのは時にしんどい。でも家族がいれば、結構何とかなるんだよね……。本を閉じたときに、うまく説明できないのだけれど、というより、あれこれ説明すると台無しというかもったいないような満ち足りた気持ちになっている。そんな珠玉の一冊。
 勤務する歯科医院に、大好きなピアニストが、患者として来ちゃった—「虫歯とピアニスト」。相容(あいい)れぬ同期との出世争いに、くそ、ここで負けるのか!—「正雄の秋」(僕の一推し)。結婚できる16歳になったから、ホントのパパに会いに行こう—「アンナの十二月」。母が急逝した。父さんと二人きりはいや、という妹の頼みで実家に帰った—「手紙に乗せて」。産休中で家にいるのだけれど、隣の夫婦の様子がどうもおかしい—「妊婦と隣人」。活動的な妻が、市議会議員に立候補すると言い出した。おいおい—「妻と選挙」の六編。
 なかなか彼女を作らない息子に、すすめてみようかな。
    ◇
 集英社・1512円