深沢潮「緑と赤」書評 日本と韓国で揺れる人間模様
評者： 朝日新聞読書面
／ 朝⽇新聞掲載：2015年11月29日
緑と赤
著者：深沢 潮
出版社：実業之日本社
ジャンル：小説・文学
ISBN: 9784408536729
発売⽇： 2015/11/06
サイズ: ２０ｃｍ／２３３ｐ
緑と赤 ［著］深沢潮
１６歳のときに在日４世だと知った大学生の知英、Ｋ−ＰＯＰ好きの友人梓、ソウルで知り合った日本に帰化した大学院生の龍平、人気アイドル似の韓国人留学生ジュンミン、在日コリアンにヘイトスピーチを繰り返すデモへのカウンター運動にのめりこむ中年の良美。日本と韓国で揺れる５人の人間模様や葛藤を丁寧に描いた群像劇。
知英は差別的なデモを目の当たりにして以来「光の見えない暗闇」にいる気持ちに苦しむ。社会の閉塞（へいそく）感を浮き彫りにしたような不寛容さに息が詰まるが、物語には希望がある。国籍に縛られず、人と正面から向き合う大切さ。アイデンティティーに悩む龍平への友人の言葉に、著者の切実な願いを感じた。
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実業之日本社・１８３６円
