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3方向から削り出す日本のかたち

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2016年01月24日
見果てぬ日本 司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦 著者:片山 杜秀 出版社:新潮社 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理

ISBN: 9784103397113
発売⽇: 2015/11/27
サイズ: 20cm/354p

見果てぬ日本―司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦 [著]片山杜秀

 歴史小説家と映画監督とSF作家。一見奇妙な取り合わせの3人を通して、過去・現在・未来の3方向から、日本という国のかたちを削りだそうと試みた一冊だ。
 原子力に熱い視線を注ぎ、科学でリスクをねじ伏せてこその未来と信じた小松。遊牧民的なロマンにあこがれ、明治以前を書き続けた司馬。過去を懐かしむでも未来を夢見るでもなく、日常を静かに撮り続けた小津。何が、彼らをそうさせたのか。
 戦争体験の影響もふまえて著者が丹念に描くのは、島国が抱える宿命の中でもがき続けた表現者たちの姿だ。その時空の延長線上にいる私たちは、どう生きるべきか。日本文化の根源にかかわる問いが、3人の背後から立ち上がる。
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 新潮社・1944円