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「地下からの贈り物」書評 古代発掘のロマンが味わえる

評者: 本郷和人 / 朝⽇新聞掲載:2014年08月10日
地下からの贈り物 新出土資料が語るいにしえの中国 (東方選書) 著者:中国出土資料学会 出版社:東方書店 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784497214119
発売⽇:
サイズ: 19cm/363p

地下からの贈り物 新出土資料が語るいにしえの中国 [編]中国出土資料学会

 古い時代の中国では、地中に冥界があり、人は死ぬと第二の生活を始めると観念されていたらしい。そのため、墓の中にはありとあらゆるもの——奴隷や牛馬の模型から日用品に至る——を副葬品として収めた。墓の主が読書人だったり、文書行政に携わる役人であると、多くの書物やレポートがそこに含まれた。
 現代中国ではそうした遺跡が次々に発掘されていて、そこで発見された文字情報(紙の発明前なので木・竹や絹布に書かれる)を復元・分析することにより、古代社会を解明する作業が進んでいる。
 本書は現役ばりばり、日本の学者47人が、新出土資料から何が分かってきたか、新出土資料はどこから来たかをまとめたもの。今まさに伸び盛りの学問だぞ!という感じが直(じか)に伝わってきて楽しい。
 かの国の「いけいけどんどん」に乗って大丈夫?といらぬ心配をしていると、末尾は辛口なコラムが締めてくれる。発掘のロマンと学究的興奮を同時に味わえる一冊。
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 東方選書・2160円