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「寄生虫なき病」書評 腸内微生物、退治が招く諸症状

評者: 内澤旬子 / 朝⽇新聞掲載:2014年06月08日
寄生虫なき病 著者:モイセズ・ベラスケス=マノフ 出版社:文藝春秋 ジャンル:暮らし・実用

ISBN: 9784163900353
発売⽇: 2014/03/17
サイズ: 20cm/463,44p

寄生虫なき病 [著]モイセズ・ベラスケス=マノフ

 寄生虫を身体に入れ、自己免疫疾患やアレルギー疾患を治す。一見突飛(とっぴ)に思える方法を入り口に、アトピーやぜんそく、膠原病(こうげんびょう)、がん、うつ病など文明病といわれる病の原因を探る。

 かつて人体は、不衛生な環境で雑多な微生物を体内に取り入れ共生したまま、進化してきた。ところが19世紀後半、感染症の原因となる細菌を発見。抗生物質を作り出し、徹底的に「病原菌(虫)」を滅亡させるべく動き出す。
 衛生対策で感染症の犠牲者は激減するが、替わって増加したのが、先にあげた文明病。これらは微生物たちが突然「不在」となって、免疫機能が誤作動して発症するという。にわかには信じ難い内容だが、膨大な実験研究結果をわかりやすく誠実に紹介しているので、驚きつつも納得。
 かつていたはずの全微生物が生息する腸に返ることが、真の健康につながる。地球環境も体内環境も、待ったなしで多様性を取り戻すべき時期に来ているのかもしれない。
    ◇
赤根洋子訳、文芸春秋・2376円