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少年アヤ「尼のような子」書評 残酷な客観視に光る美しい隠喩

評者: 内澤旬子 / 朝⽇新聞掲載:2014年05月18日
尼のような子 著者:少年アヤ 出版社:祥伝社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784396460440
発売⽇: 2014/03/03
サイズ: 19cm/193p

尼のような子 [著]少年アヤ

 ブログで人気を博した著者の初単行本。身体は男であるけれど、自我は男でもなく女でもなく、可愛くて綺麗(きれい)なものが大好きなのに、自分の容姿に自信がない。性体験もない。勇気を振り絞って告白したクラスメイトの男子には振られ、美大を卒業してからはニート。つまり職もない。ついでに肛門(こうもん)や睾丸(こうがん)には不幸なトラブル。

 そんなないないづくしの著者が依存したのは、俳優や韓流アイドルたち。大枚をはたいては写真を集めまくり、コンサートやファンミーティングに通い倒す。
 自己評価が低くコンプレックスにまみれ「こじらせ」る若い世代の書くあまたの文章の中で、本書が頭抜(ずぬ)けて光るのは、極端に走る熱い行動が面白いからだけでは決してない。卓越した自己分析から繰り出す残酷な客観化と滑稽化と、美しく切ない隠喩が絶妙のタイミングで交錯する、そんな華麗にして秀逸な文章そのものに心揺さぶられるからだ。
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 祥伝社・1404円