1. HOME
  2. 書評
  3. 「田原詩集」書評 日本語に見いだした開放感

「田原詩集」書評 日本語に見いだした開放感

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年04月20日
田原詩集 (現代詩文庫) 著者:田 原 出版社:思潮社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784783709848
発売⽇:
サイズ: 19cm/160p

田原詩集 [著]田原


 愛称はでんげんさん。中国河南省生まれの詩人田原(ティエンユアン)は、谷川俊太郎の詩を通して日本語に目ざめ、日本語で詩作をつづける。十数年にわたる詩業が205冊目の現代詩文庫にまとまった。最もよく知られる作品は、中国の四川大地震の後に書かれた「堰(せ)き止め湖」だろう。大地が千年に一度の大暴れをした後、突然現れた反逆者=堰き止め湖に、万感の思いをこめ、「お前は天と高さを競おうというのか」と語りかける。
 H氏賞詩集『石の記憶』に、「中国語は硬の中に軟がある。……日本語は柔の中に剛がある」と記す。漢字やひらがな、カタカナ、ローマ字を自在に使いわける日本語に開放感を見いだし、母語の閉鎖性が解放される気がしたという。(思潮社・1404円)