1. HOME
  2. イベント
  3. 初来日のダン・ブラウンが語った 「AIと人類の未来」とは
PR/KADOKAWA

初来日のダン・ブラウンが語った 「AIと人類の未来」とは

「われわれはどこから来て、どこに行くのか――」

 この人類最大の謎に真っ向から挑んでいるのが、ダン・ブラウンの最新作『オリジン』だ。

 主人公は『ダ・ヴィンチ・コード』で活躍した、宗教象徴学者のロバート・ラングドン教授。元教え子でコンピュータ科学者のカーシュが、人類の起源と未来の謎を解き明かす映像を発表するというので、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に招待される。

 ところがカーシュは、何者かの手によって暗殺。ラングドンは人工知能(AI)「ウィンストン」の力を借りて真相に迫る。

 『オリジン』のテーマである科学と宗教の対立は、『天使と悪魔』でも取り上げられている。最先端の科学の象徴でもあるAIは、人間の知能を超え、いずれ人間を支配するようになるのか。科学によって、宗教は否定されるのか。

 『オリジン』の刊行を記念した講演会では、「AIと人類の未来」のタイトルで、自身の思いを語った。

 「科学と宗教の問題は子どもの頃から自分にとって大事なテーマだった」というダン・ブラウン氏。父は著名な数学者。母は敬虔なキリスト教徒で、教会のオルガン奏者。両極端な両親の元で生まれ育ったことが、彼の人生に大きな影響を与えた。

 アメリカでは今なお、進化論を否定する原理主義的なキリスト教徒も少なくない。聖書の記述通り6000年前に神が7日間で天地創造を行い、生命の起源もそこにあるというのが彼らの主張だ。学校で進化論を教えようとすると、いまだに怒る親もいるという。

 「小学生の頃、博物館に行くと化石の展示があるし、進化についての記述もある。そこで神父さんに、『どちらの物語が本当なのですか?』と訊ねたら、『いい子はその質問は口にしないものだ』と言われました」とブラウン氏。

 このときから宗教に対して拒否感を抱くようになり、青年時代は宇宙物理学や数学、素粒子物理学などを熱心に学ぶ。そして作家となってからは、「科学と宗教」が、自分の人生にもかかわる大きなテーマになったという。

 

 キリスト教では、神が人を天地の中心に置いたと説いている。しかし科学の進歩につれて、天動説から地動説へ、アダムとイブの神話から進化論へと、人々の世界観は変化していった。

「科学の進歩によって、宇宙における人間の存在についてわれわれが抱いている精神的な感覚は、この先どう変わるのか。人類は、進化の連続における一過性の存在にすぎないのか」

 ただし、科学と宗教はこの先、必ずしも敵対するものではないと語った。

「AIなど科学技術が進歩すればするほど、その技術を我々人間がどう扱うのか、倫理観や哲学がより問われるようになる。未来を考え、倫理のジレンマに悩むとき、信仰や宗教が大きな影響力を持つようになる可能性があります」

 また、昨今、自分の思想や主義主張を絶対的であると思う人が増えているのではないか、とこう警鐘を鳴らした。

「人間という種を存続させるためには、開かれた心を持つことが不可欠です。一番大切なのは対話です。とくに、意見が違う人との対話が大事です。そのきっかけともなるのは、本です」

 本は国境を越え、文化圏を超え、言語を超え、そしてもっとも大切なことは、時空を超えてアイデアの共有を許してくれる。「本は、魔法を起こしてくれる」というのが、作家としてのブラウン氏の信念でもあるようだ。

 哲学的な命題を波乱万丈のエンターテイメントに仕立てている点、名所旧跡や美術作品が登場する点も、ラングドン・シリーズの魅力のひとつだ。たとえば『ダ・ヴィンチ・コード』ではパリのルーブル美術館で殺人が起き、『インフェルノ』ではフィレンツェから物語がスタート。ラングドンはシエナ、ヴェネチア、イスタンブールなどを逃避行する。

 今回の『オリジン』では、バルセロナ近郊のモンセラット修道院から物語がスタートし、ガウディの建築、サグラダ・ファミリアやカサ・ミラなどが重要な舞台となる。

 『オリジン』の舞台としてスペインを選んだ理由は、「新旧の対立を描くと決めた時点で、キリスト教の伝統と先進の技術が共存している土地を選ぼうと思った。スペインにはカトリックの敬虔な信者が多い一方で、スーパーコンピュータに関してはヨーロッパのリーダー的存在でもある」

 講演会では、ゲストとして池上彰氏も登場。池上氏からは「将来ラングドンは日本に来ることはありますか?」という質問も。それに対しては、

 「ぜひ連れていきたいと思います。彼は文化を理解するだろうし、精神性をこよなく愛すると思います。ただ、私にはまだ知識が足りない。ラングドンを日本に連れていくためには、もっと文化、哲学、宗教について学ぶ必要があります」

 日本では、科学と宗教は必ずしも対立するものではなく、共存するのだ、という。ブラウン氏は、そのあたりにも興味を抱いているようだ。ラングドン・シリーズの舞台に日本が選ばれる日が待ち遠しい。

<ダン・ブラウン> 1964年生まれ。米ニューハンプシャー生まれ。アマースト大学を卒業後、英語教師から作家へ転身。2003年3月、ロバート・ラングドンシリーズ第2作の『ダ・ヴィンチ・コード』が驚異的な売れ行きを記録し、一躍ベストセラー作家に。最新作は『オリジン』。シリーズは全世界で累計2億部を突破した。父は数学者、母は宗教音楽家、妻は美術史研究家で画家。