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よしもとばなな「スナックちどり」書評 海辺の町に小旅行

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2013年10月20日
スナックちどり 著者:よしもと ばなな 出版社:文藝春秋 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784163825106
発売⽇:
サイズ: 20cm/173p

スナックちどり [著]よしもとばなな

 主人公の「私」といとこのちどり。「私」は40歳を目前に離婚して実家に出戻り中。ちどりは両親が早くに離婚、育ててくれた祖父母も最近相次いで亡くなり、ひとりぼっち。そんな2人が、英国の西端のさびれた海辺の町に5日間の小旅行にでかける。それぞれが抱えた心の空洞が、ギネスを飲んだり、おいしい朝食を食べたり、じいちゃんやばあちゃんの思い出を話したり、クロテッドクリームでスコーンを楽しんだり、のどかな小島に舟で出かけたりするうちに、徐々に小さくなっていく。ちょっとしたアバンチュールもあるが、平凡な毎日をコツコツ生きることへの静かなエールが感じられて励まされる。居心地のいいスナックにいるよう……。
    ◇
 文芸春秋・1260円