見えない見どころがいっぱい
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年08月25日
文学のことば
著者:荒川 洋治
出版社:岩波書店
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784000246873
発売⽇:
サイズ: 20cm/196p
文学のことば [著]荒川洋治
「文学のことばには、見えない見どころがいっぱいある」と、著者は考えている。文学といっても、小説や詩のことばだけとは限らない。たとえば、犬の「お手」。成犬に「お手」と声をかけると、前脚を思いきり予想外のところに突きだしてくるときがある。常識から飛躍したその振る舞いに驚き、あわてて、これも「詩だ」と思う。
あるいは、スーパーなどからもらってきた段ボールに印刷されていることば。熊本の「はちべえトマト」、千葉の「匝瑳(そうさ)のさくら色たまご」……。遠くから運ばれてきて、空になり、いま手元にある箱の文字を楽しみ、旅ごころをさそわれる。あらゆる場面でことばを見つめる現代詩作家の好エッセー集。
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岩波書店・1890円