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逢坂剛「バックストリート」書評 凝った仕掛けの大人ミステリー

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2013年08月04日
バックストリート 著者:逢坂 剛 出版社:毎日新聞社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784620107950
発売⽇:
サイズ: 20cm/581p

バックストリート [著]逢坂剛

 スペインものを得意とする著者が世に問うた、ドイツを隠し味にしたミステリーである。フリー調査員・岡坂神策は近所のタブラオ(フラメンコ酒場)に通ううち、不審なカップルの尾行に気づく。やがて彼らを見張る公安の女性刑事まで現れ、事態は一挙に緊迫する。一見無関係に感じられる出来事の数々に、岡坂も愛読するドイツロマン派の作家クライストという意外な串を通すと、巨大な陰謀の存在が浮かび上がるという凝った仕掛けだ。
 誰かが死ぬわけでも大立ち回りがあるわけでもない物語の華は、機知に富んだ登場人物の会話にある。選び抜かれた言葉の掛け合いをも堪能できる、大人のミステリーである。
    ◇
 毎日新聞社・1995円