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「女子プロレスラーの身体とジェンダー」書評 「強さ」をめぐる問題提起

評者: 水無田気流 / 朝⽇新聞掲載:2013年06月09日
女子プロレスラーの身体とジェンダー 規範的「女らしさ」を超えて 著者:合場 敬子 出版社:明石書店 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784750337937
発売⽇:
サイズ: 21cm/227p

女子プロレスラーの身体とジェンダー 規範的「女らしさ」を超えて [著]合場敬子

女らしさや美の規範。これらは、今なお多くの女性を拘束する見えない鎖である。とりわけ、「強さ」の問題は複雑だ。近代社会は男性には身体的な強さを奨励し、他方で女性の身体性にはむしろ抑圧的に作用してきた。近代スポーツが合理的な暴力性発揮を主として男性だけに許容してきたことは、この証左である。
 一方、昨今では女性もまた強くあることが奨励される。だがその実態は、あくまでも社会が容認する範囲に留(とど)められる。女性が身体的強さを高め、そこから逸脱したらどうなるのか。本書はその先端事例として女子プロレスラーを取り上げ、検証している。
 一見突飛なこの題材は、この社会で女性が強さを目指す際に生じる軋轢(あつれき)を見事にあぶりだしていく。性的見せ物から始まった女子プロレスだが、それぞれの時期ごとに、女性にとっての強さの意味や価値が示唆される点が興味深い。「女性も強くていいんだ」と開眼した少女たちの、熱いまなざしを思いつつ。
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 明石書店・2940円