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「ファッションフード、あります。」書評 はやりの食物の元気な文化史

評者: 水無田気流 / 朝⽇新聞掲載:2013年04月28日
ファッションフード、あります。 はやりの食べ物クロニクル1970−2010 著者:畑中 三応子 出版社:紀伊國屋書店 ジャンル:暮らし・実用

ISBN: 9784314010979
発売⽇:
サイズ: 18cm/380p

ファッションフード、あります。 [著]畑中三応子 

 何とも元気の良い食文化レビュー本。筆者は流行の食べ物を「ファッションフード」と命名、主として1970年代から2010年までを疾駆して見せた。70年代は、ちょうど日本が消費文化の成熟を見せ始めた時期である。あらゆる商品のメディア形態化は、食文化にも波及した。
 特筆すべきは、ファッションフードが、食を既存の性別分業意識から解放したとの指摘である。食文化は望ましい家庭像と表裏一体だが、「おしゃれな食」の浸透は、若い女性を台所から解放し、さらに男性を趣味の料理へと誘(いざな)った。なるほど、消費文化は既存のアイデンティティーを攪乱(かくらん)し、軽やかに越境させる。
 若干物足りなかったのは、スローフードや地産地消への目配りか。ただこれも、流行の俎上(そじょう)から軽やかに論じたともいえる。また筆者も指摘するように、食育もファッションフードの観点を取り入れるべきだろう。氾濫(はんらん)する食情報を、「消化」する必要を再認させる快書。
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 紀伊國屋書店・2520円