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「ラカン」書評 謎めいたところが魅力

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2013年04月21日
ラカン (文庫クセジュ) 著者:ポール=ロラン・アスン 出版社:白水社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784560509784
発売⽇:
サイズ: 18cm/173,1p

ラカン [著]ポールロラン・アスン

 フロイトの後継を自認する精神分析家であり、構造主義思想家、哲学者として今も影響を与え続けているジャック・ラカン(1901?1981)。その思想は難解であることでも知られるが、本書は、とっつきにくさのもとだった式や図を減らし、フロイトを参照軸にしながら、思索の軌跡を大づかみに、しかしツボは外さず語る。彼の書いた論文集『エクリ』より、彼の講義=『セミネール』に重点をおいたのが特徴だ。とはいえ、分かりやすいと言えばウソになる。「象徴的な父は思考不可能である」「性関係は存在しない」といった“ラカン節”もちゃんと残っている。謎めいたところが魅力でもあることをわきまえた著者とみた。
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西尾彰泰訳、白水社文庫クセジュ・1260円