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「女ノマド、一人砂漠に生きる」書評 遊牧民のベールの下に迫る

評者: 田中優子 / 朝⽇新聞掲載:2013年02月24日
女ノマド、一人砂漠に生きる (集英社新書 集英社新書ノンフィクション) 著者:常見 藤代 出版社:集英社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784087206722
発売⽇:
サイズ: 18cm/254p

女ノマド、一人砂漠に生きる [著]常見藤代

 紅海沿岸のハルガダ(エジプト)から車で約2時間奥に入った砂漠で、たった一人遊牧生活を営むホシュマン族の女性とともに生活した記録である。彼女の娘や嫁など、家族たちも登場する。
 ラクダや人の足跡で、何が起こっているか読める。動きながらも誰がどこにいるかわかる。ラクダの気持ちも理解できる。周辺の町にいるより安心だという。そのサバイバルも興味深いが、何より、さまざまな女性たちとかわす「砂漠のガールズトーク」が面白い。
 婚外交渉はタブーだが一夫多妻の家族は多く、離婚も盛んだ。結納金のやりとり、結婚式、新婚の夜、出産、喧嘩(けんか)、婚約、町での観光の仕事などが、気楽に活(い)き活きと語られる。筆者は、結婚直前の女性の買い物に同行したりもする。姿はすっかりベールに被(おお)われているが、新婚生活のために大量の色とりどりの下着を買う花嫁。
 まさに、ベールの下の女性たちの生活が見える本だ。
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 集英社新書・798円