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「百人一首で読み解く平安時代」書評 選ばれた理由の分析に説得力

評者: 逢坂剛 / 朝⽇新聞掲載:2013年02月10日
百人一首で読み解く平安時代 (角川選書) 著者:吉海 直人 出版社:角川学芸出版 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784047035164
発売⽇:
サイズ: 19cm/284p

百人一首で読み解く平安時代 [著]吉海直人

 百人一首といえば、とかく反射神経を競う早取り競技、という印象が強い。評者も学生時代、それにのめり込んだ口だが、歌そのものにも関心があって、研究書を読みあさったものだった。
 本書は、歌の解釈もさることながら、詠者の複雑な出自や人間関係、彼らが生きた時代背景を活写して、すこぶる刺激的だ。著者独自の解釈に加えて、古今の研究書や解釈本にも目を配り、出典を明示してそれぞれの異説を、ていねいに紹介する。その、誠実な博捜ぶりが、快い。
 ことに、他の勅撰(ちょくせん)集への収載状況を精査して、なぜ当該歌が百首の中に選ばれたかを検証する、分析の過程が読みどころだろう。選者藤原定家が、自身の歌の好みだけでなく、いわゆる〈平安朝史観〉に基づいて、詠者の出自や親子関係、男女関係、政治的なしがらみなどから、総合的に判断して百首を選んだ、との指摘には説得力がある。
 平安時代を、和歌を通して描き出した、好著である。
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 角川選書・1890円