本能寺の変がなくっても...
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年02月03日
織田信長 (人物叢書 新装版)
著者:池上 裕子
出版社:吉川弘文館
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784642052658
発売⽇: 2012/12/08
サイズ: 19cm/302p
織田信長 [著]池上裕子
本能寺の変がなかったら、天下統一は早くに成就したのではないか。日本史上有数の関心を集めるだろうこの「もし」に、著者は「はたしてそうだろうか」と疑問を投げかける。たとえば、織田信長は征服を狙う地の武士を利用しても、目的を達成すれば使い捨て、経営は譜代家臣に委ねた。戦争の目的は領国拡大にあり、武士階級の統合を目指したとは言い難い、と。事実、謀反と抵抗に悩まされた生涯であった。著者は史料を丹念に検証し、旧体制の破壊者、革新者といった織田信長のイメージを一つひとつはぎ取っていく。発給文書の内容から、領主は見ても百姓や村とは向き合わない「農政・民政がない」支配者であった、というように。
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吉川弘文館・2415円