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「大阪の神さん仏さん」書評 宗教都市の横顔、縦横に議論

評者: 中島岳志 / 朝⽇新聞掲載:2012年10月28日
大阪の神さん仏さん 著者:釈 徹宗 出版社:140B ジャンル:哲学・思想・宗教・心理

ISBN: 9784903993140
発売⽇:
サイズ: 19cm/285p

大阪の神さん仏さん [著]釈徹宗・高島幸次

 住吉大社、四天王寺、大阪天満宮、石山本願寺……。大阪という都市の形成には、思いのほか、社寺が深く関わっている。本書は、仏教・神道のスペシャリストであり、生粋の大阪人である二人が、縦横無尽に宗教都市・大阪を語り尽くす。
 大阪は全国で二番目に寺の数が多く、中でも浄土真宗の寺が多い。釈は大阪商人の勤勉・節約といった商業倫理の源泉を、真宗の教えの中に見出(みいだ)す。
 真宗は、しばしばプロテスタントと類似していると言われる。商いに従事し、職務を全うすることこそ凡夫の仏道と説いた蓮如の教えは、プロテスタンティズムの倫理が資本主義の精神を生み出したとするウェーバーのテーゼと重なる。実際、大阪では真宗の寺内町ネットワークが職業共同体を構成し、繊維業や製薬業などを発展させた。
 大阪人の気質に宗教的基層を見出す議論は、ユニークかつスリリング。目から鱗(うろこ)の一冊だ。
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 140B・1575円